『竜の坐す蒼と朱』粗筋

最終更新:2017/09/07


名前でお察し、古代ギリシア的な世界観。水の竜の統べる街ポリ=オ・ドラコス・キヴェルナの物語。セオス=トゥ・イダトゥス(水の神)と呼ばれる竜を祀り、その血を与えられた『コリ』の祈りによって、沙漠の中にあっても渾渾と水の湧く豊かな街を形成していた。


アポロンはセオスを祀りコリが住む神殿に奴隷として仕えている。若い神官の中では出世頭と目されるディオンとは同い年で、なにかと因縁の仲である。ディオンの母セメレーはコリの世話係をしており、幼い頃に奴隷として売られたアポロンの実質的養母でもある。


ある日駄賃として金一封を貰ったアポロンは、市場で幼い奴隷が売られているのを見、驚いた。その奴隷は『水神の娘』『竜の娘』であるコリと同じ目をしていたのだ。(一般人はコリの姿を見ることすら叶わないが、一般的でなく奔放なアポロンは神殿の奥に忍び込みあろうことかコリと友達になっていた。)


(奴隷商人は当然奴隷がコリと同じ目をしていると知らずただのやせぎすな亜人として扱っていた。)アポロンは迷わず金一封を奴隷に投げ打ち、足りない分は借金することにした。奴隷の少年は名をキーマといい、アポロンが口を割らせたところによるとまさにコリとセオスを祀った神殿を探していたという。


キーマ曰わく、セオスが「神」だなんてもっての他だった。本名をラスピ(汚泥)といい、悪行三昧で竜の世界を追放された存在であった。

竜は一世一代の単性生殖で、長い年月を生きる間に口にした血が腹の中の卵に宿り、新たに特異な竜が生まれる。しかし竜の血を他者に分けることは禁忌とされていた。なぜなら竜の血には強力な毒が含まれており、生態系に及ぼす影響たるや尋常ではないからである。


それをラスピは、人の子を拐ってきては己の血を飲ませ、結果として死に至らしめていたのだ。目的は単純明快で、あらゆる生き物のなかで人間が最も大きな信仰心を抱いているため、竜の血に適合した子を産み出し、それを依り代に自分の力を誇示し、祭り上げることによって人々の信仰心を一身に集めて貢ぎ物を独り占めしようとしたのである。そしてそれは『コリ』によって成功してしまった。それが150年前のことだったとキーマはいう。


つまりこの街の発展は、ラスピが地下水脈を欲しいままに掘り引き、他の地域の渇水を下敷きにして成し遂げられてきたのであった。

それを聞いて黙っていられる深謀遠慮なアポロンではない。善は急げとキーマを連れ、神殿へと向かう。ディオンは話のわかるやつ、大丈夫であるはずだった。


抜け道を通り、コリの居住地へとたどり着いた二人を待っていたのは、弓を構えアポロンたちを射殺そうとするディオンと他の神官たちであった。

「コリを奪いに来る暴虐の徒が現れるとのセオスの信託があった。それがまさか君だったなんて。残念だよ」

ディオンは腹の底からラスピを盲信していたのだ。


そこへ地鳴りと共に姿を表したのはなんとラスピとコリである。コリはまばゆい光に包まれており、それを見た神官たちは正義は我らにこそありと士気を昂らせた。しかしキーマ曰、あれはラスピが年月かけてコリに溜め込んできた生命エネルギーを急激に吸い取っている最中なのだという。


ラスピも古竜であり、いつ死んでもおかしくない。それを先延ばしにするためコリに定期的に血を飲ませ、若く新しい竜の血を蓄えさせていた。自分の地位を脅かそうとする者を消すために、今まさにその血を吸い出しているのだ。急激に血を失えばいかな竜の娘といえ人の体が持たない。アポロンは激怒した。


その瞬間、キーマが掌を短剣で掻い切り、返す勢いでアポロンの頬をはたいた。何をするんだと言い募る前に、アポロンの体に異変が起きた!キーマの本性は、ラスピの暴走を案じた竜たちが、ラスピを倒しコリを救うために自分たちの肉を削ぎ作り上げた人形であった。その血を与えられたものは当然、『竜の娘』と同じ肉体を持つに至る。


適合せずに死ぬ可能性もあったが、そこは一か八か、体の強そうな若い男を選んだのだという。それを見て、ラスピの目の色が変わる。キーマを食えば、他の強い竜たちの血肉が手に入ることになる。そうとわかれば神官たちなど眼中から消し飛ぶ。


ラスピは神官たちを薙ぎ倒し、コリから血を得るのももう十分と放り出して、自らキーマに向かってきた。すわや、と思われたその時、ラスピの巨駆が宙に舞った。肉体の完成したアポロンが、ラスピを殴り飛ばしたのである。ディオンが、御神体がとか、罰当たりめ、とかわめいたが、ついでに殴り飛ばした。


怒り心頭に発する勢いのラスピは醜い形相でアポロンを攻撃しようとする。しかしアポロンには敵わない。その隙をついてディオンがコリを確保しようとするが、キーマに先回りされていて、逆に再びぶっ飛ばされる。周囲の神官たちは竜に踏み潰されてはたまらないと逃げ出す始末である。


結局戦いは、アポロンとキーマの圧勝および神殿の倒壊で終わった。神殿の地下からは、劣悪な環境の中から大勢の子供たちが発見され、ラスピが『竜の子』の予備を蓄えていたことも知られた。キーマは世を案ずる竜たちの肉だけで出来ていたのではない。ラスピの実験で命を落とした数多くの少年少女たちのなきがらを芯に作られていた。


ラスピの悪行は暴かれ、竜たちから預かった伝言が町中に知らされた。ラスピによって不自然に歪められた水脈を元に戻し、自然環境を復元するというものであった。これにより街は、枯れた大地の唯一のオアシスとしてでなく、豊かな緑の中の小さな街として生きることになった。


争いの終わった街には竜たちがやってきて、昏倒しているラスピを森へ連れ帰った。端からお前らがやれば良かったじゃねーかとアポロンはつっこんだが、「人の信仰心は人の行いによってしか打ち砕かれることはない。第一私たちが街中で暴れたらラスピ退治どころではなかったよ」と一蹴されてしまった。


またアポロンやコリ、他の子供たちも、竜たちと共に竜たちの隠れ里へ行くことになった。そこでラスピの血を抜き親元へ返すことが、ラスピをのさばらせてしまった竜たちにできる罪滅ぼしだという。

ちなみにアポロンはもともと体内に入った竜の血がごく微量だったため比較的すぐ元に戻るそうだ。


キーマは竜たちの意思を継いで、他の地で悪さを働いている竜を退治しに行くという。住み着いていた神殿が物理的にも信仰的にも破壊されてしまったアポロンは宿無しになったついでだとキーマの旅に同行することを決める。「奴隷から竜退治の英雄だなんてかっこいいじゃんよ」だそうだ。


このことが世の理にどう影響していくのかはまた別のお話である。


ってなもんで、これぎり。



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この後の展開としては

○アポロン実は大昔の『竜の子』の子孫→キーマの血が適合したのも覚醒遺伝のおかげ

○ディオン闇落ち→ラスピが封印されてる場所を探し出してラスピ復活させる→ぶっ殺して自ら新世界の神になる→ラスピの亡骸から竜の子軍団を作り上げて竜の隠れ里を襲撃

○vsアポロンかな